《MUMEI》 「内館先輩スゲーっす!俺に朗読なんて無理だ。皆と外行きたかった。」 部室の床に安西は倒れている。朗読組は外取材の映像組とは別に室内で課題文を読み込んでいた。俺は編集を佐藤と藤田に指導する。乙矢と高遠は用事で休みである。 「でも大分良くなった。」 褒められてなのか気を良くした七生はにんまり顔だ。 「そうなの?聞きたいー。」 佐藤と藤田がお願いしている。 「おーちゃんも実力上がったんだ。聞いて聞いて!」 安西が神戸に話を振る。神戸のあだ名おーちゃんなんだ……。 「有志、俺5時には帰らないといけないから。」 帰り支度を整えて神戸は冷たく対応する。七生達とは打ち解けたようだ。 「裏切り者だー」 安西が叫んだ。 「緑の血だー」 七生も参加する。何だろう緑の血って。 「部長、部内にいじめがあります。」 神戸、洒落が利いてる。 「俺もおーちゃんの朗読聞きたいな。」 思い切って安西達に便乗。おーちゃんて、某有名オバケにいたような……ちまっとしたやつ。なんか小柄な感じがハマっているしこれからも呼びたいな。 「お疲れ様です。おーちゃん言うの止めて下さい。」 神戸改めおーちゃんはいつものように5時に部室を出ていく。 「じゃーなおーちゃん」 「明日ねおーちゃん」 口々と皆で別れを告げた。おーちゃんが苦笑いをしていたのが俺の角度から見える。 「……かん……おーちゃんとあの短時間でよく打ち解けましたね。」 「俺なんか話しけたら眉に皺寄せられただけ」 佐藤と藤田もあまり彼にいい印象を持っていなかったようだ。今日はおーちゃんという新しい一面を知れた。七生と安西が組んだら最強かもしれない? 「おーちゃん小学校から私立なんだ。結構イイトコ育ちで真面目一筋で通して人と話しするのが苦手みたいスよ。」 いつの間に彼のこと詳しく調べたんだ。実は安西って探偵? 「照れ屋なところ二郎に似てたかな。」 七生は時折俺へ色目を使うのを止めてほしい。 「照れ屋違うし。おーちゃんてあだ名誰考えたの?」 「俺ですよ!先輩達も有志って読んでくれて下さいね!木下先輩はジロ先輩でイイスカ?」 ジロ……。犬みたいだ。 「お前はユッシーだ。ユッシー。」 七生が新しい安西のあだ名を考案する。ヨッ●ーですか? 「もっと屈強なのにして下さいよう!」 安西の不満炸裂? 「後輩は後輩らしく先輩に礼儀を正しくしていれば宜しい。 ………………名前で呼べるのは家族だけだから。」 後半は耳打ちしてきた。家族……ねー。やばいやばい、口がにやけてしまう。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |