《MUMEI》

現在中学3年生である龍雄にとって最も古い、強烈な印象を残す
記憶は龍雄が5歳の時のある出来事であった。
その頃龍雄は、母の添い寝で寝付かされていたが、我慢できない尿意にふと目覚めると、横にいる筈の母の姿がなかった。
お化けを怖がる年頃の少年にとって、階下のトイレまで付き添ってもらい、優しい手で小さなペニスを引き出されて、あやすように放尿をうながされる真夜中の一時は、まだ未分化の性欲と甘い罪悪感を龍雄にもたらす、他からは得られぬ日々の密かな楽しみのひとつであった。
その未だ知らぬ未知への導き手である、母の姿が無い。
5歳の龍雄は心細さから来る軽いパニックに襲われながらも、すでに限界に近い尿意はお化けへの恐怖も打ち消し、龍雄は意を決してベッドから抜け出し、暗い階段を壁を手探りしながら、
階下へと下り始めた。

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