《MUMEI》
外の世界
「よう。」

「またあなたですか…。」

ねこの声が曇ります。


「今日は何の用ですか?」

「お前、外の世界を知っているか?」

「外、ですか…?」


黒猫の突然の問い掛けに、ねこは一瞬言葉を詰まらせました。

そんな事、今まで一度も考えた事がなかったのです。


朝起きたら空を見て


ご飯を食べては空を見て


昼寝から覚めたら空を見て

夜は星を見ながら眠りに着く。



考えてみれば、ねこは生まれてからずっと空ばかり見ていました。



「僕は……」


ブワッと吹いた春の初めの強い風が、ねこの言葉を奪っていきました。


「今日もいい天気だな。」
黒猫は気持ちよさ気にググッと延びをしました。


「そうですね…。」


けれども、ねこの声は曇ったままでした。

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