《MUMEI》

何分たっただろうか。
緋駿という奴に何ですかと答えられてからお互い何も言わない。

俺は何か言おうかと思ったが、緋駿は目をキョロキョロさせてガタガタ震えているのでこっちまで不安になった。

「えぇー。たっちゃんはどっちが可愛いと思う?」
「俺は氷那(ヒナ)の選ぶもの全てが大好きだよ!」

そんなカップルらしき人達の声が聞こえるまで俺は、いつの間にか廊下が人でいっぱい居ることには気付かなかった。

俺はやっと我にかえって自分のクラスに帰ろうと緋駿に背を向け、早々と歩き出した。

その手に青いノートがしっかりと握られていることに気付いたのは自分のクラスに着いてからだった。

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