《MUMEI》
ハルトside
『ハァ…ハァ……』

思いっきり走ったからとても疲れた。
久しぶりの人間の体だったからね。

少し歩くと草原が広がっている場所に着いた。

よく、よく見ると僕から30mくらい離れたところに、魔法使いさんが倒れていた。

急いで走り出した僕は魔法使いさんの10mくらい手前になって、何か妙な気配がするのに気が付いた。

すると魔法使いさんは急に起き出し、辺りをキョロキョロと見まわしていた。

10mという間があっても、僕には魔法使いさんがとても怯えているようにしか見えなかった。

これはまずい。

そう思って走り出した3秒後、3匹の狼たちは魔法使いさんに飛び掛かろうとしていた。

『やめろぉぉぉぉぉぉぉ!』

僕は今までで一度も出した事がないくらいに大きな声で叫んだ。

そして狼たちに向かってやけくそに石を投げつけた。
(虹色の石じゃないよ)

やけくそに投げた石が1匹にあたり気絶したが、2匹はギリギリでかわしていた。

『お前たちには魔法使いさんの指一本も触れさせない!!!絶対に、絶対にだぁぁぁぁ!』

僕は2匹に石が当たらなかったことにムシャクシャして、一番でかい狼に思いっきり体当たりをした。

デカい狼を狙ったつもりがなぜかもう1匹も道連れにしていた。

こういう場面って、もっと壮絶なバトルが始まるようなやつだったが、あっさり勝ってしまった。

そのことに少し笑ってしまう。

そして、僕は魔法使いさんを守ったことが誇らしく思った。

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