《MUMEI》

ほら、伊藤さん黙っちゃったじゃん!
恥ずかしい……

恥ずか……


『裕斗……』

「え…は、はい」


(ゆうちゃん)じゃない……ゆうちゃんじゃ……






俺は、ゆっくりと息を吸い込み…






ゆっくりと…吐きだす。






『今から…キスしないか?…俺も…したい…』






「伊藤…さん…」






胸がいっぱいで、立ってらんなくて…
俺はズルズルと崩れ、座りこんだ。






「今すぐ会いたいよ…、好き…、好き…、
伊藤さん…
今すぐ…キスしてよ」






もう、止まらない…







人を好きになる感情を…





愛する人を求める、





切ない気持ちが…







――今すぐ…心も躰も充たされたい。







「今すぐ…抱いて…
伊藤さんに…、今すぐ抱かれたいよ……」







瞑りっぱなしの眼から、涙が湧き、頬を伝う。






―――愛されたい。






――愛されたい。







俺は右腕で…そっと自分を抱きしめる。






『……今…何処に居るんだ?』







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