《MUMEI》 君は落ち着いたようで、そっと僕の手を握った。 今度は、ちゃんと握り返す。 この事に安心したのか、君は微笑んだ。 そして僕らは、近くの公園に行った。 この公園には少数の遊具しかないが、とても広い。 さっそく着くと、僕は滑り台で遊ぼうと言った。 ここの滑り台はローラー式で、くねくね曲がっている分とても長い。 きっと君も喜んでくれると思った。 すると君は顔をふるふると横に振った。 そして、今にも消えそうな声で 『怖い…』 そう言った。 「どうして?」 僕はすかさず聞いた。 『言えない。』 君は涙目だった。 僕は急に悲しくなった。 「分かったよ。」 僕は次に砂場に行こうと言った。 今度は喜んでくれると思った。 でも、また君は顔をふるふると横に振った。 僕は無性に腹が立った。 「じゃぁ何がしたいわけ?」 『ここにいて。』 「何もしないで?」 『そばにいて。』 「訳分かんない。」 きっと君はただそばにいてほしかったのだろうけど、僕はそんなことどうでも良かった。 『お願い…。』 この時の君の顔が、あまりにも寂しそうだったから、僕はすかさず抱きついてしまった。 『えっ…』 えっ。 僕は自分でも驚いた。 でも、君は優しく僕の背中に手を回した。 前へ |次へ |
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