《MUMEI》

あのね。
私のクラスには、

小滝 羅魅(さたき らみん)

っていう女の子が居るの。

地味で
根暗で
真面目で
全然面白くないんだよ。

あんまり目立たないし。

私とは正反対の子なの。
だからね。

私、羅明ちゃんをいじめることにしたんだ。
最初は、ただ物を隠したりするだけだったんだ。

でもね。

私の友達で一緒に羅明ちゃんをいじめてる

騎太 茉柚々(きた まゆゆ)

って女の子が、それじゃぁ全然つまんないよって言ったの。

その日から、羅明ちゃんをいじめる主犯はね、茉柚々ちゃんになったんだ。

茉柚々ちゃんったら羅明ちゃんを蹴ったりしたの。
私はそれを見ていて可哀想だなって思ったよ。
でも、何もしなかった。

だって、いじめられるのが私になったら嫌だもん。

私はね、なるべく羅明ちゃんに関わらないようにした。
あと、茉柚々ちゃんにも。

いじめて1年位経ったある日ね。

茉柚々ちゃんが死んじゃったの。
自殺だって。

まだ小学生4年生なのに。

茉柚々ちゃんが死んだから、もう羅明ちゃんはいじめられなくなると思ったんだけど。

また、羅明をいじめたら?

って。
人の頼みを断れない私は、その言葉に頷くしかなかった。

だから、翌日からまたいじめることになった。

今度はちゃんとやった。
羅明ちゃんを無視したり、
洋服で見えない所にいっぱい痣をつけた。

羅明ちゃん、それでも学校に来た。

私はだんだん怖くなった。
もし、ばれたらどうしようって。
もしかしたら学校に行けなくなるかもしれない。

そう考えたら、いじめたくなくなったの。

だからね。
私にまた羅明ちゃんをいじめたら?って言ってきた

深水 弐褒(ふかみ にほ)

って女の子に言ったの。

もうやめようって。

でも、止めてくれなかった。
逆に、脅してきた。

次、何か言ったら今度はお前をいじめてやるって。

怖かった。
でも、やっぱり何も言い返せなくて羅明ちゃんをいじめる事になったの。

ある日ね。
羅明ちゃんは言ったんだ。

『私は…。あなたたちに何かしたのでしょうか…?』

その弱々しく小さい声が、私に何も出来なくさせた。

『えぇ。あなたが生きてることで私の心はイライラで一杯なの。』

口を挟んできたのは弐褒ちゃんだった。

『そんな………。』

羅明ちゃんは細く、痩せ細った体を縮めてうずくまったの。

『汚らしいわね。』

弐褒ちゃんはそう吐き捨てて出ていってしまった。

私は、ただ羅明ちゃんを見つめていたの。
何時間そうしていただろう。

突然羅明ちゃんは立った。
そして、私を見つめた。

私は急に立った羅明ちゃんに驚いて、変な態勢だったんだよ。

羅明ちゃんは私を見つめながら、ニィッと笑った。
その笑顔は、紛れもなく悪役がするような顔だった。

その日からちょうど一週間経った日、弐褒ちゃんが死んだ。

やっぱり、自殺だった。

その日から、羅明ちゃんは変わったの。

ずっと下ろしていた髪を切った。
メガネを外した。
洋服がオシャレになった。
性格が明るくなった。
よく笑うようになった。

突然変わった羅明ちゃんに、男子はすぐ落ちた。

羅明ちゃんは、1日に3回告白されるという記録を出したんだよ。
皆、羅明ちゃんを好きになった。

羅明ちゃんは、優しくなった。


私以外に。

羅明ちゃんは私を無視した。
私にだけ冷たくなった。
よく、睨まれるようになった。

羅明ちゃんがそうすると、皆それに従うようになった。

だから、私は孤立した。

いつの間にか髪が伸びた。
でも結ぶのが面倒だったし、何より皆の視線が辛かったので下ろした。

突然、目が悪くなった。
多分、理科でやった実験のせいだと思う。
だから、メガネを付けた。

だんだん、洋服が汚くなった。
皆に踏まれたりしてたからだと思う。
可愛かった洋服が汚くなって嫌だったので、いつも地味な洋服にした。

皆からいじめられるようになった私は、当然笑えなくなった。
性格だって変わってしまった。

次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫