《MUMEI》

『よし。入れるよ…。』

月曜日、佑十は果奈の下駄箱に手紙を入れた。

【今日の放課後、教室で待っててください。】

ごくありきたりな内容だ。
それでも、佑十は昨日、頑張って書いたのだろう。

所々文字がガタガタになっている。

俺と佑十は昼休みに下駄箱にいたせいか、廊下は人がたくさんいた。

しかし、そんなのは気にせずに手紙をいれる。

『あうー。やっぱり止めようかな。』

なんて言ってる佑十の背中を押して、クラスへと向かった。

クラスには、あんまり人が居なかった。
大体の人がインキャだった。

その中には、もちろん果奈も含まれている。

「しっかし、なんで佑十は果奈が好きなんだよ。」

果奈に聞こえないように小声で話しかける。

『き、聞こえちゃう…』

「へーき。へーき。で?」

『えっと。なんていうんだろ。最初、果奈ちゃんは全然笑わないと思ってたんだ。』

なんて失礼なんだと思いながらフッと微笑む。

『でも、でもね!』

急に、佑十は笑顔になった。

『果奈ちゃん、笑ったんだ。』

佑十は、目がキラキラ光っていた。
好きな人の話をするときの目とかじゃなくて、憧れの人を語る時みたいな目。

『僕がボケたら、果奈ちゃんね。笑ってくれたんだ。その笑顔が、僕は好きなんだよ。あ、もちろん果奈ちゃん自体もね。』

「へーぇ。」

果奈ってあんまそういうのに笑わなそうなんだけどなぁ。

まぁ、そういうのは佑十の凄い所だけどね。

『あっ!居た!!佑十くん!!』

突然、甲高い声がした。

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