《MUMEI》

『トイレ行ってくる。真、行こ。』

佑十は廊下に出ようとした。
俺はすかさず追う。

「じゃーな。亜未。」

『おぅよ。』

亜未は小さく手を振った。

その仕草から、俺達のファンに遠慮していることが伝わった。

『佑十くぅ〜ん!』

佑十は、あからさまにゲッ…という顔をした。

『あっ!真君も!』

『あのね。えっと。』

『言っちゃえ言っちゃえ!』

『今日、一緒に遊ばない?』

アヒル口をして、上目使いで見上げてくる高之 雛楽(たかの ひなた)。

こいつ、学年一可愛いらしいんだけど、俺達にそれが効くはずもなく。

『は?やだ。きもい。』

佑十は、普段可愛くて優しすぎるキャラのはずが、思わず言っちゃったようだ。

『『『『えっ?!』』』』

女子達の、驚きの声が広がる。

『佑……十君?』

『なに?止めてくんない?俺の名前呼ぶなよ。』

俺すらも、驚いた。

佑十は、【僕】だ。
【俺】だってよ……。

女子はポカーンしている。

佑十自身はと言うと、自分でもびっくりしているようだった。

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