《MUMEI》
この痛み。
「はい。これ、欲しかったんでしょ。」

フルーツサンドをレジに通してから、緋駿は言った。
私は驚く。

「え…。なんで?」

「だって、いつもコレじゃん。」

緋駿は特に表情が変わる様子もなく、淡々と喋る。
未だに、私は追い付けないままだ。

「知ってたの?」

「俺の席から些原の席って結構見えるんだよ。知らなかった?」

「ぇ、見てたの?」

緋駿は微笑んだ。

【ドキッ】

一瞬、ほんの一瞬だけ胸が痛んだ。
この痛みに気付いたのは結構後のことだ。

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