《MUMEI》

『ねぇ。弛人瀬。』

突然、名前を呼ばれた。
でも別にそんな驚く事でもないけど。

「待ってたよ。苺合。」

僕達は、ニッコリと微笑み合う。

『もう、二度と離さない。』

今度は、苺合が気味悪く笑う。

「そんなの、ごめんさ。」

そして、僕が高笑いをする。

『そんなこと、言わずに。全部、私にちょうだい。』
『私が、あなたを守ってアゲル。』

「あぁ。遠慮しとく。僕は、君を愛してるから。」

僕は、別に君を嫌いな訳じゃない。
と、思う。

『そう。じゃあ。私は、あなたを……。』

「そうだね。僕は、君を……。」



「『殺さなければいけない。』」



次の瞬間、僕達は一斉に駆け出す。
目的は一緒。

人を、殺すため。

【グサッ…】

部屋中に、何かが突き刺さる音がした。
僕の手には、ナイフが握られていて、君の手にも、ナイフが握られている。

どちらとも、先端には目的の人物が突き刺さっている。

僕達は、同時に倒れこんだ。

冷や汗をかいている。
嫌な汗だ。

「僕は、君を愛してる。」

僕は、今や死体となっている苺合に語りかけた。

「あぁ。もう。本当に」
「大好きだよぅ!!」

そして、僕は事切れる。




              …[end]

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