《MUMEI》

私は、親から嫌われていた。
親は機嫌が悪いとすぐ私に暴力を振るった。

私が小学5年生の時。
母親は新しい父親を作った。

新しい父親は最初、とても穏やかで優しかった。
なのに。
それなのに、父親は私を襲うようになった。

母親が飲み会で居ないある日の夜、寝ていた私を父親は乱暴に起こした。

酒を飲んでいるせいで酔っている父親は、私の洋服を無理矢理脱がした。

私は当時小学5年生だった事もありそれなりに胸は膨らんでいたし、生理だってあった。

その体で、父親は何度も逝った。

何度も
何度も。

私は体が壊れそうだった。
痛くて
苦しくて
虚しくて
罪悪感に押し潰されそうだった。

父親は事が終わった後、いびきをかきながら寝ていた。

いっそのこと、殺してやろうかと思った。
私の初めてを奪ったコイツを。

血だって出ていたのに、コイツは止めなかった。
心配もせずに、自分の性欲をさらけだしていた。

その日から、母親が飲み会のある三週目の日曜日は、コイツが私を襲う日になった。

現在でもコイツは私を襲っている。

そして、君と出会った。
私は君と会いたくなかった。

こんな、父親に犯されているような汚い私に。
私に触れたら、きっと君は気づいてしまう。

だから、私は君を避けていた。

大好きな人を
愛している人を。

もう、逃げたくないのに。
それでも、やっぱり逃げてしまう。

君は、中学校でモテていた。
君の話はしょっちゅう女子の間で話されていた。

【私、告白しようかなぁ…】【分かる!でも、佳(けい)君って小柚(さゆ)ちゃんのこと振ったんでしょ?】
【えぇ!?そうなの!!!?だって、あの子ってめっちゃ可愛いじゃん!振る要素ある!?】
【理想高いんじゃね!?でも、そこも良いわぁ。】
【アハハッ!】

この人達より前から、ずっと前から私は君を知っているのに。
気安く[けい]って呼ばないでほしい。

私の佳君。
私だけの佳君。

あぁ。
大好き。

でも、やっぱり私には敵わない。
大好きだけど、遠い。

近くにいたのに、遠くに行っちゃった。

七才の頃の約束、ずっと覚えていた。
でも、君は来なかったよね。

ずっとずっと、日が暮れるまで待っていたのに。

結局、君にとってはどうでも良かったんだ。
あぁ。
苦しい。

お願い。
父親に犯される前の私に戻りたい。

戻れたら、私は君の近くで歩ける気がするんだ。

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