《MUMEI》
『ミズキ』
ミズキ先輩にはなかなかお目にかかることはないという。

そんなにすごい人なら目立つんじゃないのかな、と思ったけど、理由は別にあった。

それは教室から滅多に出ないということ。

どうしたら会えるだろうかと、試行錯誤の毎日。

「オイ、泉結季。ちょっとこっち来いよ」

この頭の良い梅田高校は、地元の名声の裏にイジメという問題を抱えている。

病んでるんだな、と思う。

「お前さ、前のテスト何位だったの?」

「そんなこといちいち覚えてないし…」

「今朝掲示板見た?」

「……………」

見なくてもわかる。今日のイジメは、僕の成績表が大量に印刷され、学校中にばらまかれていた。掲示板にも貼られていたということだろう。

「なんか言えよ」

「生意気なヤツだな、そんな成績の癖に」

頭良い人が偉いと思ってるんだな。貧相だと思う。

「もうやっちまおうぜ」

「その可愛いお顔だけは傷つけないようにしてやるよ」

あぁどうも。バレたくないだけだろ、どうせ。

痛みに耐える。それだけが僕のできること。

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