《MUMEI》
1つめの物語
ある日、いつも通り誰もいない帰り道を歩いていると、俺は見つけた。

「なんだこれ。」

それは、黒い球だった。
直径5cmほどのそれはうにょうにょ動く。
動く。
動く。

俺はそれを拾い上げると、よく見つめてみた。

「うまそーだな。」

突如それが美味しそうに見えた俺は、なんの躊躇もなく口に運んだ。

口に入れた瞬間、頭が燃えるように熱くなった感覚がした。

「きもちー」

その感覚は嫌いじゃない。

口の中でうにょうにょ動くそれを噛み潰した。
ブチュ
中にはトロトロの液体が入っていて、それがまた美味い。

ごくんっ

直径5cmの球1つでこんなに幸せになれるとは…。

俺は、今の感覚を忘れないようによく頭に刻んだ。
次の瞬間

俺はみちばたで倒れ込んだ。

頭が痛くてしょうがない。
手足が思い通りに動かない。

苦しい
クルシイ

誰か助けてくれ…。
そんな願いも届かず、俺の意識は遠のいた。

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