《MUMEI》 思考停止。「新斗くん……もっとよく考えてみて。顔を上げてみて。あなたを責める人はここには誰もいない。私たちはあなたのなに?」 ほんの少しだけ、新斗は顔を上げた。 その表情は暗い。だがさっきまでと何か違う。 光とは違う。希望と言えるほど大きくない。これは……期待? 「………ボクの………?」 「バカね。友達でしょ?」 新斗の瞳が揺れる。 「……でも、ボクはみんなと友達でいる資格なんて……許されるわけな、ん……て……」 何かを思い出したように、新斗の言葉が詰まる。 そうだよ、許す許さないは自分で決める事じゃない。 友達でいる資格なんてもの、ありはしないんだよ。 「あなたが辛い思いをしている時、苦しい時、あなたには力になってくれる人がいるはずでしょ?よく思い出してみて。あなたの周りには誰がいたのかを」 新斗の手は震えていた。ぐしゃっと両手で自分の顔を覆った。 「………ボクは………ボクには………誰にも……!」 新斗の葛藤。 まだ新斗は自分を許せない。 立ち上がる事を自分で否定している。 自分の手のひらにあるものを、見て見ぬふりしようとしている。 まだ足りない。 見て見ぬふりなど出来ないような、極大な何かが 「私がいるじゃない」 うずくまる新斗を包み込むように、埜嶋さんはそっと抱き寄せた。 「不思研部のみんなが離れていってしまうかもしれない恐怖はわかるよ。でも私は不思研部じゃない。あなたがここまで気に病んでしまう程の嘘を私には吐いてない」 「そ、そんなことはない……!ボクは君を傷つけた……!」 「あれは勝負だよ。あなたが嘘を吐いたわけじゃない」 「傷つけたことには変わりない……!」 「いいよ、全部許すよ。私の言う事が信じられない?」 新斗は頭を抱えて叫ぶ。 「無理だよ!!ボクはもうボクを許せないんだ!!何を話そうがボクにはもう……!!」 「あなたの事が好きです」 「……………………………………………………は……………………?」 新斗を抱き締める力が強まった。 自暴自棄な新斗の言葉は、止まった。 前へ |次へ |
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