《MUMEI》

 説明が遅れたが、俺は普段主に上層階級のクライアント達から奴隷の改造を依頼されている。昨日のオーダーは『君が選んだ奴を奴隷にしたいので、拾った奴を指定の様に改造して欲しい』との事だった。全くあの男からしたら災難だったな──そんな事を思いながら、俺は次のクライアントからの依頼を確認した。
「えー何々?『送った奴隷の声帯弄って動物の鳴き声にして下さい。動物の種類はお任せします──』またこういう依頼か」
この地域ではというかこの国では──奴隷を声を出せなくさせたり、別の動物の鳴き声にさせたり、兎に角人語を発音させなくさせる性癖の人間が多い。俺もそうだが──
「なんだ今回声帯弄るだけか」
それ単品ではつまらないと感じる派だった。なので今回の依頼が終わったらオカズ[性処理&性癖用]の奴隷でも買いに行こうか考えつつ、俺は依頼されている奴隷がどんな奴か荷物を待った──荷物は翌日に届いた。黒く長い髪に赤い瞳の少年だった。
「ほぅ、厨二病心を擽られるな……」
そう言いつつ付属していたカルテを見ると──
「お前、そもそも声帯が完全に壊れてるじゃないか……お前の主は困ったものだな」
「──」
これは全部取っ替えなきゃ駄目そうだなとカルテに貼られていた喉内部の写真と奴隷を見比べ、
「お前にはカラスの声帯をやろう」
そう言って戸棚からカラスの声帯入りの瓶を奴隷に見せた。
「!」
奴隷はその厨二病感満載な姿と真逆の純粋無垢な瞳でキラキラとそのカラスの声帯入りの瓶を眺めていた。
 今更だが、動物系の声帯は実際にその動物の物を使うと確実にサイズが合わないので、俺は他の依頼で摘出した声帯を加工したもので代用している。今回のカラスの声帯もそうだ。
「さぁ、出来たぞ? 早速鳴いてみろ」
「カァ……カー!」
俺がそう言うと、奴隷は恐る恐る最初は鳴き……
「カァカァ! カ〜ァ」
その後は嬉しそうに──そして喧しい位に鳴いていた。郵便でクライアントの所へ返すまで鳴いていたので俺は寝不足でクラクラしながら帰宅し──その日は昼寝をしてしまった。

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