《MUMEI》 モデルは何回か続いた。 かすみのヌードを描き始めてから2か月が過ぎ、 数えられないくらいのデッサンを描き、何枚か出来た。 エリカの家のアトリエに入って来て、かすみは着ているものを素早く脱ぐ。セーターの裾に両手を掛け、ピンクのブラジャーが現れる。スカートのホックを外し、ストッキング、そして下着と、恥じらうという様子もなく取り去っていく。 「最近はいい感じです かすみサンの本質が全部見える」 「そう全部 さらけ出そうと思ってるの なんか無理してた所が全部出して女性に戻った感じ」 「それを全て描きますからね かすみさんの全てを描きたいかなずっとかすみサンを描きたかった できればヌードで」 「そうなんだ」 「これを見て下さい」 エリカはスケッチブックの絵を見せた。 「これかすみさんををイメージしたスケッチブックというか」 スケッチブックには1ページことに裸のかすみが描かれていた。 「差し上げます」 「良いの?」 「バックアップはありますから」 コーヒーの香りが立ち上がる。 「お砂糖は?」 エリカが、下を向いたまま言いながら、自分のカップに一つ落とした。 「要らない」 かすみが黙ってコーヒーを飲んでいる。 「かすみさんモデル続けます?」 「うーん 最初は夫への当てつけだったんだけど 最近は なんだかんだ言ってモデルをするのは楽しいかな」 「それはよかった」 「裸だけど描かれる色んな私がいて楽しい」 家の倉庫にはエリカの絵が沢山飾られていた 「書き終わったらここに飾るんです」 「へー すごいわね」 かすみは一枚一枚見て歩いた 「私ほんとは画家になりたくて でも美大ではさっぱり 親は留学させてやると言ってくれたんですが 自分の力でお金を貯めたくて」 「えらいわねえ」 「私なんか男の人と遊ぶ事しか考えてなかった 」 「昔は結構遊んでたとか」 「うーん普通かな 旦那にあってから真面目になったかな 夫にあってからきちんとして アパレル系に入り直して良き妻 良き母で居ようと」 「かすみさんは男の人と何人くらい付き合ったんですか」 「私?5人」 「やっぱりビッチじゃないですか」 「そうかなあ どうしても私を軽い感じにしたいのね」 コーヒーを飲みながら言う 「毎日色んな人に抱かれていたわけじゃないのよ 勘違いしないでね」 「またまたあ 男アサリばっかやってたんでしょ」 「 ほんとは全然違うのよ」 「じゃ かすみサンの本性を暴きましょう」 「怖いわねえ」 数日後、エリカは出かけなければならなくなった。 画材を買うという そう長い時間ではないからと言っていた。 と言うわけで、かすみは裸でバルコニーの板敷に座っていた 裸でいるよう言われている。 エリカの母親が飲み物を持ってきた。 「かすみさん……」 エリカの母親に呼ばれた。物静かな声だった。 「はい、奥様」 エリカたちが普通に服を着ている中、かすみだけが生まれたままの姿だ。それがもう当たり前のように続いていた。 エリカの母親は、かすみの裸身を見回した後、 「お辛くはないのですか」 気遣いが感じられる言葉だった。 「エリカさんが良くしてくれますから」 「それなら良いのですが」 「いつも恥ずかしそうにしていらっしゃいますから。」 「ええ……」 「上司の方を裸のモデルになんて」 エリカの母親はつぶやいた。 前へ |次へ |
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