《MUMEI》

 未だに『月が綺麗ですね』を『I love you』と訳すのか? それすらも理解できない程に私の人生は女子力やロマンスが皆無だった。
「そんなんだと、大人になってから婚期遅れちゃうよ?」
あの頃仲良く登下校していた友人のサキの声が懐かしく響く。
 彼女は棺桶の中──静かに眠っていて、私は結婚とか恋人なんて要らないからサキとずっと友達で……一緒に生きて居たかった。
「……マイさん?」
 今の私には目の前の……サキの双子の兄であるマキトを見分ける力はなかった様で、
「サキ! ほら、やっぱりサキは生きてたんだ!!」
それのせいで、私はマキトの精神を追い込んでしまった様だった。

 葬式から5日後、マキトはサキの服を着てサキとして生きる様になった──正直言って、性別の違いのせいで全然似ていない。似ていない筈なのに私はそれを『サキ』と認識し──マキト自身も『サキ』だと思い
疑わない。
 



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