《MUMEI》

「…」


「…」


「…」


はりつめた空気が漂う

いつもおちゃらけている太一ですら、この場では何も言えないんだろう



「2人きりで何やってんだよ」


そう言って、無理矢理部屋の中に入る笑也


あたしは何も言えず、不安げにあたしを見る太一と顔を見合わせる



「……何だ、これ」


部屋の奥で、笑也の怒りの声がした


太一に手を繋がれながら、笑也のもとに行くと、部屋中の段ボールに笑也は睨んでいた


「何だよこれ、説明し…!!」バシッ


「「!!」」


繋いでいた手を振り払われた


「なっ…なにすんだよ!!」

怒鳴る太一に、さらに睨む笑也


「二人で愛の逃避行でもする気か…?」

「そうだと言ったら?」

「…」

「…」

睨み合う二人

足が震える


「こいつて話がある。出ていけ」

「は…、出てくのはあんただろ、笑也くん」

「…」

「笑也くん、かなのこと何とも思ってねぇんだろ?いつもひどい態度取ってこいつ傷つけて…」


やめて―…


「大体笑也くん他に好きなやついたじゃん!なんでかなと付き合ってんだよ!おかしいだろ!!」


やめて…お願い―…


「何とも思ってないならもうかなを振り回すな!!

え…

かな…?」


「…」


「っ…」


泣いているあたしに笑也が近づく

手を掴まれたが、振りほどこうとする

そんな微力意味なく…

ギュウ…と、抱きしめられた。






いつのまにか、太一は部屋を出て行った

たぶん、出て行くとき「かな、幸せになれよ」って言っていた

でも、よく聞こえなかった
だって……

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