《MUMEI》
番外編1:悩ませるモノ
小さかった頃は東京の祖母の家に行く度によく本を買ってもらっていた。
星が好きだったから、図鑑が多かった。

その時の記憶はもうあんまり残って無いけど、今もおれの本棚の一角を陣取ってる図鑑達がその証拠だ。

母が増えていく本の数に悩んで文句を言うまで祖母はおれに本を買ってくれた。

星を本格的に勉強するにはどうやら、理系に進む必要があったらしい。
残念ながらおれは小数の掛け算から算数は苦手だったから、数学メインの理系なんてとてもじゃないが無理だった。

でも、あんなに好きだった星を専門的に学べないというにも関わらず、不思議と文系を選ぶことに抵抗は感じなかった。

おれの知らない所で、既におれの星への興味が失われてしまっていたのかもしれない。

そう思うと、図鑑を買ってくれていたあの時の祖母に、何だか言いようの無い後ろめたさを感じずにはいられなかった。




祖母は今認知症という病気らしい。
腦が萎縮して、記憶障害や妄想などの症状がでる病気だそうだ。

初めてそのことを聞いた時は、何だか実感が湧かなかったし、何処かで冷たいおれが「関係無い。」と言っていた。

自分でも酷いヤツだと思う。

でも、祖母はおれが3歳の頃に祖父を亡くしてからずっと東京で一人暮らしをしていたのだ。
幼かった頃こそ良く訪ねていたが、最近は滅多にそういう事はなかった。
だから、全くの他人の話を聞く様に祖母の話を聞いていたのだろう。

そうだ。そうなのだ。

幼い頃に好きだった祖母を、おれは今ではすっかり何とも思わなくなっているのだ。



おれはその事をずっと頭の片隅で悩み続けている。

だが一向に答えが出そうな気がしない。


罪悪感に凄く良く似ているこのモヤモヤは、何と言う名前なのだろう。

おれはそのモヤモヤを持ってまた寝るのだ。

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