《MUMEI》
ヘリと警備隊
静かな時間が過ぎていく。
ユウゴもユキナも何も言わない。
ただ、校舎を染める炎がたまにゴゥと音を立てるだけ。
あと何時間かしたら、おそらく隣の校舎まで飲み込んでしまうだろう。


 しばらくして、ふと下の方が騒がしくなってきたことに気付いた。
二人は顔を見合わせる。
そして自然と耳を鉄板にくっつけた。
すぐ真下で複数の人の気配がする。
話し声はない。
しかし、確実にそこにいる。

 さらに聞き耳を立てていると、上空からプロペラ音が響いてきた。
「……まさか、見つかった?」
小さな声でユキナが聞く。

 ユウゴは近づいてくるヘリを見上げ、すぐに足元へ視線を落とした。

こんな場所では、ヘリから身を隠すことはできない。
すでにあのヘリにつけられたカメラにはユウゴたちの姿が映し出されているのだろう。
 問題は、警備隊たちにその情報が伝えられるのかどうかである。
もし、警備隊にヘリからの情報が伝えられないのならば、おそらくまだ見つかっていないだろう。


 ユウゴは無言で再び、鉄板に耳を押し当てた。
ガチャガチャと何かの音が聞こえてくる。
そして次の瞬間、鈍い衝撃が二人の足元を揺らした。
「やばい、バレてるぞ!踏ん張れ!」
 ユウゴは叫ぶと同時に俯せに倒れ、全体重を鉄板にかけた。
ユキナも慌ててそれに倣う。

 衝撃は二度、三度と感覚を置いて繰り返され、ピタリと止んだ。
「……諦めたとか?」
「そんなはずないだろ。油断するな」
 二人は尚も体に力を入れたまま、寝そべり続ける。
やがて、今度はさらに大きな衝撃が二人を襲った。
その一撃で、少しだけ鉄板が浮いてしまった。
「ユ、ユウゴ!」
必死の形相でユキナが叫ぶが、ユウゴに答える余裕はない。

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