《MUMEI》
天然
―ピーンポーン♪

「はーい!!今開けます!!」

今宵はインターホンの音に気がつくと玄関へ駆け寄り、ドアを開けた。

「歩雪くん!!」

「・・・・・・退院早々何やってんの」

「え?だってインターホンなったから・・・・・・」

「そういうことじゃなくて。何で大人しく寝てないの」

「だってもう平気だよ!!たまに少しだるくなるけど・・・・・・」

「平気じゃないじゃん」

ドアの向こうに立つ歩雪は呆れた顔を見せながら中へ入る。

お邪魔します、と今宵の頭に手をのせると玄関に上がった。

今宵はのせられた手にドキドキとしながら歩雪に尋ねる。

「ど、どうしたの?今日は」

「顔みたら帰ろうと思ってたんだけど・・・・・・。こんなに元気だとは、」

思っても無かった、と歩雪は先程のやり取りを思い出す。

『えー!?何でオレらは今宵の家に行っちゃいけねぇんだよ!?』

『あたし達が行って何かいけないことでもあるわけ?』

『まだ病み上がりなのに煩くしたらダメでしょ』

『オレは別に煩くねーよ!!』

『あたしだって煩くないわよ!!』

『・・・・・・それが煩いんだって』

「煩くなんないように2人は置いてきたんだけど別によかったかな」

あの苦労はなんだったんだ、と歩雪はため息をつく。

そんな歩雪を見て今宵はにぱっと笑ってみせる。

「んーそりゃ琴吹くんと秋葉にも会いたかったけど、歩雪くんが来てくれたからいいよ!!」

「・・・・・・何それ」

「だーかーらー!!歩雪くんに会えただけでいいって言ったの!!」

「・・・・・・天然娘は黙ってた方がいいよ」

歩雪はそう言った瞬間、今宵の腕を引いて自分の中に閉じ込めた。

予想もしていなかった今宵は反射的に声をあげる。

「うひゃ!!」

「何それ・・・・・・!!変な声」

「ふ、歩雪くんがこんなことするからでしょ!!!」

腕の中にある顔が赤くなっているであろうことを確信しながら、歩雪はククッと笑いを零して今宵の肩に顔をうずめる。

「あんなこと言われて黙っていられるわけ無いでしょ」

「・・・・・・あんなこと?」

「まぁいいや」

そう呟くと歩雪はキュッと今宵を抱きしめる腕に力を入れた。

その歩雪の顔が今宵の顔と同じ様に赤く染まっていたのは秘密。

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