《MUMEI》
てこの原理
再び下からの衝撃に、バタンと鉄板が浮かぶ。
その瞬間、ガギンと何か別の音が聞こえた。
「な、なに?今の音」
「知るか!!」
必死に踏ん張りながらユウゴは怒鳴った。

 いったい、どんな物を何人で押し上げているのだろうか。
そうとう強い力である。

 三度目の衝撃で浮き上がった鉄板に、素早く何かが挟み込まれた。
 それは固く四角い杭のような物で、それによって開いた僅かな隙間から、細い鉄の棒が一瞬にして何本も差し込まれてきた。
「く、くそ!ちょっ、やばいぞ」
 叫びながらも、どうすることもできない。
下からの衝撃はまだ続いているのだ。
踏ん張ることに精一杯で、鉄の棒まで手が回らない。

 棒は息を合わせたように同時に動きを止めた。
すると、強い衝撃とは別の力がユウゴたちを押し上げ始めた。
「お、おい。踏ん張ったまま、少しこっちに寄れ!」
てこの原理で鉄板を押し上げようとしていることに気付き、ユウゴは鉄の棒の方へ少し体を寄せた。
ユキナも同じように移動する。
「よし、ストップ!動くなよ?」
あまり体重を移動させると、下からの衝撃で吹き飛ばされてしまう。
これ以上、動くことはできそうにない。

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