《MUMEI》
パトカー
 部屋に入ると、タイキは固定端末をチェックした。
どうやら設定は変わっていないようだ。
ミユウは言われた通り、何もしなかったらしい。

 ホッとしながら、タイキは制服から私服に着替えた。
それから何をするでもなく、端末のテレビモードを眺めていると、いつの間にか日も落ちてしまっていた。
「あー、腹減ったな」
 言いながら立ち上がると、冷凍庫から冷凍食品を取り出す。
「そういえばミユウ、帰ってこないのかな」
少し気になりつつも、連絡のしようがない。
 一人静かに食事を終え、シャワーを浴びる。
すでに時刻は真夜中だ。

 結局、ミユウは戻って来ないまま、タイキは眠りについた。


 翌朝、突然の大きな音にタイキは目を覚ました。
ガタガタ、バタン!とドアが閉まる音が部屋に響く。
そして、険しい表情のミユウが息を切らせて走り込んできた。
「な、なに、どうした?」
 入ってくるなり、タイキの言葉を無視して、ミユウは閉まったカーテンの隙間から外を確認するように見ている。
 つられるようにして、タイキも外を覗いた。
すると、何台ものパトカーがゆっくりと徐行しながら通り抜けるところだった。
 ミユウは全てのパトカーが通り過ぎるのを確認すると、大きく息を吐いた。

「……まさか、追われてるのか?」
すっかり目が覚めたタイキは、まだ息の荒いミユウに言う。
しかし、ミユウはタイキを一瞥しただけで何も言わずに床へ座り込んだ。

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