《MUMEI》
うそ、嘘!!!
         
「だからあ…来る途中に、すっげえ美少女が転んでてさ!!」

―まーた、始まった。


あたしはため息を吐き出しながら、一応たずねた。


「…で?どうしたって??」


「それがさあ、うるうるの瞳でおれの目を見つめて
“手を貸してくれませんか?ちょっと足くじいちゃって…”

って言うわけよ!!」


「…それで」


「まあ、おれ困ってる人見るとほっとけないタイプじゃん!?病院まで肩貸し…」


饒舌に喋っていた、彼の唇がふいに動きを止める。


―あたしが睨みつけたからだ。


「それで、遅れたって??」

「…ま、まぁそんなとこ!」

「はい、うそー。遅れた罰でアイスおごりね〜」

「うえ〜!?またかよお!!」

唇をとがらせて反論する彼。

「遅れたのが悪い!!」

いつものように一喝するあたし。

「……わかったよ」


―空は快晴。

夏休みの朝の陽射しが射しこむ教室で、

あたし(相原幸:アイハラ ユキ)と梶野朋春(カジノ トモハル)は、だらだらと喋りながら補習の課題を進めていた。

終業式の日。
廊下に貼り出された

『補習該当者:
2-A 2番 梶野朋春
  21番 相原幸

             以上 』

のお知らせ。


「うそ、」


呆然と立ち尽くすあたしの後ろから


「おお!!よろしくなあ!相原♪」


ノーテンキな声。


「嘘!!!」


―補習…しかも、あの梶野と2人っきり!?


…そんなこんなで、今日に至るわけです。

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