《MUMEI》

2人の間には沈黙が続く。

加奈子はよく分かっていない今宵を見て、ちゃんと話さなければいけない、と口を開いた。

涙でぼやける視界を取り除いて。

「今宵の病気はね、起こった例がとても少ないから詳しいことは分からないらしいの。でも、貧血が頻繁に起こるようになって、体力が段々となくなっていってしまうそうよ。それで・・・・・・」

「それで、何・・・・・・?」

「それで・・・心臓を動かす筋肉も衰えて、最後は静かに動かなくなるらしいの・・・・・・」

心臓が動かなくなると言うことは、もう人間でいられなくなってしまうということ。

つまり・・・・・・『死』を意味する。

今宵は思わず自分の心臓の上に手をやり、ぎゅっと服の袖を掴む。

「いつ・・・・・・?いつわたしのココは動かなくなるの・・・・・・?」

「遅くても・・・半年、と言われたわ」

「半、年・・・・・・?」

ギュッと手に力を入れたまま目を瞑る。

そんな・・・・・・どうして今?

今までずっと健康だったのに。

「・・・・・・やっぱり、避けられない道だったのね・・・・・・」

「どういう、こと?」

目を開けると加奈子の辛そうな顔がある。

お母さんは、分かってたの・・・・・・?

加奈子の口調からそういうニュアンスが聞き取れた。

「ごめんなさい、今宵。あなたと同じ病気を患った人を、私は2人知っているの・・・・・・」

「2人?」

今宵は母の言葉に矛盾を感じた。

さっきは起こった例が少ないって・・・・・・。

それなのに、2人も知っている人が?

しかもそれが私に関係があるの・・・・・・?

「それはね・・・あなたのお父さんと朔夜、あなたのお姉さんなの」

「お父さんと、朔夜お姉ちゃんが・・・・・・?」

思っても見なかった人物が挙げられ、今宵は驚くしかない。

でも・・・・・・!?

「でもお父さんとお姉ちゃんは事故で亡くなったって!!」

「それは嘘、なの」

「何で嘘なんか・・・・・・・」

もう何がなんだか分からない。

今宵の小刻みに震え始める。

「・・・・・・これはね、お父さんと決めたことなの」

「お父さんと・・・・・・?」

加奈子は頷くとその時のことを話し出した。

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