《MUMEI》
・0・
夏休みの補習が始まるまで、
あたしは梶野と一言も喋ったことが無かった。

同じクラスになったのも2年になってからだったし、
喋る機会なんてのもなくて。


嘘ばっかりつく、って有名だったから、

名前は知ってたけど。


―だから、別にクラスで目立ってるわけでもない、
むしろ印象が薄いはずのあたしの名前を、梶野が覚えてたことには正直驚いた。


「嘘!!!、じゃねえよ!」

ショックを受けているあたしの顔真似をしながらそう言った梶野は、
続けてあたしにこう言い放った。


「よっしゃ相原、明日8:00に教室な!!遅れたらアイスおごり!!」


―補習初日。

時間には几帳面なあたしは30分遅刻した梶野から、
嘘の言い訳の記念すべき第1回目を聞かされることになるんだけど。

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