《MUMEI》
o・v・o
その男の子は
ふわっ、と柔らかい微笑を浮かべて、
こっちに近づいてきた。

薄茶色の髪。

優しげな瞳。

ちょうどいい色に焼けた肌。


「…大丈夫だった??」


優しい声。


「あの、えっと、あたし、何があったのかさっぱり…」


慌てて答えると、


「幸の顔にね、遊んでた男子の投げた野球ボールが当たりそうになったんだって!!」


マキが説明すると、
保健の先生が言葉を引き継ぐ。


「そこを、通りかかった東郷君が助けてくれたのよ。
ボールったって、硬式野球のは頭に当たると危ないからね。
さすがの運動神経ね、東郷君!」


べた褒めされた東郷君もさすがに照れたのか、
苦笑しながら、


「はあ…、」


と、言葉を濁らせただけだった。

苦笑する顔さえ綺麗で、
見惚れてしまった。



―別に、面食いな訳じゃない。


ただ、もう、

目が合った瞬間。

びっくりするくらいの早さで

あたしは

あたしを救ってくれた王子様に

恋をしてしまった。

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