《MUMEI》
抜けた
しかし、なかなか思ったように先へ進むことができない。
 少し進めば、行く手を複数の警備隊に遮られて右や左に方向を変える。
結果、グルグルとほとんど同じ場所を回ってしまっていた。
「くそ!」
悪態をつきながら、ユウゴは突き出された短剣を交わす。

 そろそろユキナが向こうへ辿り着いた頃かと視線を向けると、やはり彼女も同じように進めないでいるようだった。
気のせいか、さっきよりも人数が増えているようだ。
 ユウゴは走りながら、警備隊たちが来た入口に目をやった。
すると、今まさに二人の警備隊がはい出て来たところだった。
「……マジかよ。こいつら、まだ増えんのか?」
 ユウゴは苛立ちを感じながら、相手の攻撃を交わす。
そして、隙をついてはドライバーを突き出した。

 何人目かにドライバーを突き出した時、運よく短剣が足元に転がってきた。
ユウゴは素早くそれを拾いあげると、目の前にいた警備隊に向けてドライバーを投げ付けた。
「よし!!」
 ユウゴは気合いを入れるように怒鳴ると、短剣を器用に操りながら先へ進む。

 短剣といえどもドライバーよりも剣先が長く、相手の攻撃を交わしやすい。
実際、さっきよりも早く前へ進むことが出来ている。

 途中、ユキナが倒した相手の短剣を見つけ、拾うことができた。
ユキナを見ると、彼女はまだドライバーで頑張っているようだ。
「おい、ユキナ!これ使え!」
 大声で怒鳴りながら、ユウゴはそれを高く彼女の方へ放り投げた。

 声に気付いたユキナは慌てて手を伸ばし、見事に短剣をキャッチする。
そして、なぜか笑みを浮かべると勢いを増して走り出した。

「あいつも、そうとう切れてるな」
苦笑しながらユウゴも走る。
そして、かすり傷を負いながらも二人は、ほぼ同時に警備隊の群を抜けた。

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