貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い《MUMEI》19才。
30分は歩いて居たと思う。
目の前に土手が見えて、「この向こうだよ」とアキが云う。
「川?」
この質問にアキは答えなかったけど、土手の頂上から大きめの川を見下ろすことが出来た。
「はい、ストップ〜」
頂上を少し下ったところで、アキが座る様にわたしを促す。
二人の手が自然に離れ、変わりに芝生のひんやりとした感覚に包まれた。
空はもう真っ暗で、ところどころ星が瞬く。
アキはわたしから少し離れて、携帯で電話を掛けて居る。
「OKです」と云う声だけはわたしにも聞こえた。
「お待たせ。ごめんね、寒い中こんなとこ連れて来て」
「ううん、アキの手あったかかったから大丈夫」
アキはニヤっとして、またわたしの手を取った。
その時、
対岸から光が昇った。
シュルシュルシュル…
パーン!!!
花火だった。
「…え?」
わたしは口を開けて、間抜けな顔をしていたと思う。
そこでアキはやっと今回の意図を話し始める。
「誕生日おめでとう。これはあたしからのプレゼント」
2発目の花火が舞い上がる。
「…随分、大がかりなプレゼントだね」
「うん、夏くらいから計画してた。今日が晴れじゃなかったらどうしようかって、心配だったよ」
「ありがとう」
打ち上げ花火、計19発。
わたしが迎えた年齢と同じ数。
寒さも忘れ、季節外れの花火に見とれて居て、全く気付かなかったのだけど、途中から近所の人たちが集まって来てたらしく、最後の花火が開いた後、自然と拍手が沸き起こった。
また、先を越された。
ちょっと悔しく思いながら、わたしは久し振りに泣いた。
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