《MUMEI》
「イヤですか?」
「は?、イヤな訳ねーだろーが、俺はゆうちゃんが愛しくて愛しくてしゃーねぇのに…、むしろ…嬉しいよ……」
伊藤さんは最後、溜め息を吐く様に、言った。
そして優しく髪を撫でられている内に瞼が重くなってきた。
何だか…安心する…
「ほっとする…、伊藤さんの胸…でも…」
「でも?」
俺ははぁと溜め息をつき、そして伊藤さんを見上げた。
「切なくて…胸が苦しくて…何だか泣きたくなる…、
どうしてだろう…、
安心するのに……」
だからこうしてくっついていないと気がふれそう。
抱きつく事でギリギリ自分を保っている様に。
すると伊藤さんは髪を撫でるのを止め、その手を俺の頬につけてきた。
「そりゃーゆうちゃん、俺に恋してっからだろ、ゆうちゃんは俺の事好きで好きでしゃーねえんだもんな?」
――好き、好き…。
これが…恋……。
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