《MUMEI》

暖かい陽射し、自転車で1時間と20分かけて片道の病院を走る。

額に汗がにじんで体中ベタベタする。


七生が治るのはいつだろう。でも、また自転車で二人で走るはずだ。俺の前を風を切って走るはずだ。







「…………じろー……」

「…… 七生、 治ったの」

「んんん、治った?」

「……えーと、ゴメン、寝ぼけてたみたいで。」

口の端の涎を拭う。
びっくりした、七生を想ってたら七生が出てきた。


「俺のこと考えて、待っててくれた?」

……エスパーか?

「どうかな、横にただ居ただけじゃない?」

「帰ろー。帰ろー。」

「七生だけ?安西は?」

「先帰ったよ。じろー気持ち良さそうに寝てたから邪魔したくなかったし。つか、俺がさせねー。」

「そんなんじゃ俺は落ちないからねー。」

互いに笑って流す。廊下にはブラスバンド部がいるから、二人の空間なんてない。

「早く帰ろう。なんか、落ち着かなくなって来た。外で頭冷やしたい。」

耳赤くなっている。何考えてんだか。……言える立場じゃないけどさ。

でも、本当は解っていた。場所なんて関係ない、気持ちが合えばなんだって何処でだって出来る。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫