《MUMEI》

オレは自分の遅い走りを他人に笑われることを無意識のうちに恐れていた…。


岡ヤンは、それを見抜いていたのだろう。


素人のオレが目一杯攻めたとしてもタカが知れている。

岡ヤンの言う通り、既にタイムは岡ヤンが叩き出してくれているから、オレは無理に攻める必要は無い。

だから岡ヤンの声援を聞いた人達が、オレの走りを見ると、オレが軽く流してる風に捉える筈だ。


岡ヤンが初めて走ったときの経験をもとにオレを気遣い、緊張し難いシチュエーションを整えてくれたのだろう…。


オレは、あれほど激しかった動悸がスーっと治まってゆくのを感じた。


(ありがとう…岡ヤン!)

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