《MUMEI》

「もう…、これドーランで隠せるかなあ…、最悪だよ…」

「はは、隠せるけど隠すなよー、折角たくさん付けたんだからよー」






――この人俺がモデルだってこと…ゼってー忘れてるよな…、





俺も夢中になっちゃって気付かなかったのも悪いんだけどさ…。





しかしこれ、マジ最悪だって…。


俺は歯磨きを終え、使いきりパックのジェルを顔に付ける。





そして備えつけの華奢なT字剃刀で 髭を落とし始めた。





ちょっとピリピリする…、でもジェルのお陰で綺麗には剃れている。




俺が手際良く剃り終えると同時に、しゃっとカーテンが開いた。




「…あ、そうか…俺も剃っちゃお、剃刀取ってくれ」




俺の手元の剃刀に気付き、秀幸は手を差し出してきた。


「そこで剃るの?鏡ないじゃん…」





俺は自分が使っていた剃刀をゴミ箱に捨て、新しい剃刀のパックを開け、手渡した。

秀幸は受け取ったは良いが、黙ったままじっと剃刀を見つめ、
そしてバスタブから出てきて、縁に座った。

「な、落として」
「え?」

「ゆうちゃんが剃って」

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫