《MUMEI》 調子「とーごーぅ!!!」 そんなあたしの至福の時間は、 サッカー部員の声によって終わりを告げた。 「あー…もう行かなきゃ… トモくん、おばさんによろしく言っといて! じゃあ、またね。 トモくん、…―相原さん!!」 明るい笑顔でそう言うと、 東郷君はグラウンドに向かって駆けていった。 “またね” ―だって!!! 補習も来てみるもんだなあ… 「相原、露骨過ぎ」 梶野(本物)が呆れ顔で言う。 「だって…あんなに喋ったの初めてだったんだもん」 「顔赤いぞ(笑) てか、ほとんど喋ってねえじゃんか」 「…っるさいなあ!! ―あ・そういえば、あれホントだったんだね!!」 恥ずかしくなったあたしは、 無理やり話題を変えた。 「ん?なにが」 「ほら!あの、東郷君と従兄弟って話!!」 「ああ、あれか。 ―まあ、従兄弟っつっても全然血ィ繋がってねんだけどな」 「そーなの??」 「…おう、俺の母ちゃんの妹が、 司の父ちゃんの再婚相手。」 「えーと…うん」 「お前、理解できてねーだろ」 「えーと……うん」 ―聞いちゃいけない事だったかな…?? 複雑で、ちょっとわかんないけど… 梶野は困惑気味のあたしを見て大きくため息をつくと、 にかっと笑って くしゃっ、とあたしの頭を撫でた。 「お前は、あんま難しいこと考えなくていーんだって!!」 …一瞬。 ―ほんの、一瞬だけ、 ドキッ としてしまった。 「…調子狂う…」 小さく呟くと、 「え、なに?? キョンシー!?」 ―どう聞き間違えたら 『調子』が『キョンシー』になんの!? 「ばーか!」 キョトンとしたままの梶野にそういうと、 あたしは自転車をこぎだした。 前へ |次へ |
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