《MUMEI》
がむしゃらに
「ゴキブリみたいよね。……黒いし」
ユキナも顔をしかめながら言った。
「確かに。……さて、これはまた、形勢逆転か?」
「みたいね。短い優勢だったね」

二人は銃を構えたまま、身動きがとれない。
対して、警備隊たちはいつでも撃てる状況である。
おそらく、少しでも動いたらユウゴたちの体は蜂の巣だろう。

「降参してみようか……?」
冗談とも本気とも取れる口調でユキナは言った。
「それで、許してもらえるか?」
「ダメかな」
「……この惨状じゃあ、無理だろ。たぶん」
言いながら、ユウゴは自分の周りを目だけを動かして眺めた。

辺り一面、死体の山である。

「そうだよねえ。それじゃあ、どうしよう」
「……覚悟を決めるか」
 ユウゴはそう言うと、大きく深呼吸をした。
ユキナも同じように息を吸い込み、吐く。
そして二人同時に叫びながら、再び銃の乱射を始めた。
撃ちながら、がむしゃらに走り回る。
 警備隊たちも一斉に二人に向けて攻撃を開始した。

 ユウゴは頬や足、腹や腕などに軽く衝撃を受けたが、どういうわけかまともに喰らってはいない。
それはユキナも同じらしかった。
ラッキーとばかりにユウゴは目を見開き、奥歯を噛み締めながら銃を握る。

そして間もなく、ユウゴは異変に気付いた。
 警備隊たちの銃弾がだんだん減ってきたのだ。

 気がつくと、ユウゴの銃からは弾など出ていなかった。
「いつの間に…」
舌打ちをしながら、ユウゴは状況を確認しようと視線を走らせた。

 ユキナはまだ、がむしゃらに走り回っていたが、やはり銃は弾切れとなっている。
「ユキナ!弾、切れてるぞ」
しかし、走り回るユキナには聞こえていないようだった。
 ユウゴは彼女の元へ駆け寄りながら、警備隊たちに目を向けた。
「……なんだ?いったい」

 警備隊たちの数は、ほとんど減ってはいなかった。
しかし、その半分がユウゴたちに背を向けていたのだ。

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