《MUMEI》

次の瞬間に倒れたのは相手の男だった。




「‥ゲホッ!ゲホッ!」



腹に両手をあててうずくまる男。


大学時代ボクシングやってた男に殴りかかるなんて馬鹿な奴‥‥




「‥おい!まぢかよ!大丈夫か!?!!!」


もう一人の男が掴んでいた女の腕を離し、うずくまる男に近寄った。



その瞬間に、俺は女を引っ張って自分の後ろに隠した。



「ちくしょーッ!行くぞ!」


男がうずくまる男を車に入れて、運転席に乗り込んで車を走らせた―――。









俺は車が完璧に見えなくなったのを確認すると、女を見下ろした。



見た感じ、【女】っていうよりは【女の子】って感じ。‥ってゆーか、女子高生っぽく見えた。


俺はとりあえずその女の子に声をかけてみる――。





『‥‥大丈夫?』




その子は涙をボロボロ流して両手で自分を抱きながら何回かうなずいた。




『‥‥大丈夫じゃないだろ?‥‥‥家どこ?送るから』




「‥‥ンッ‥‥‥。」






女の子は泣くばかりでショックからか言葉が出ないみたいだった。

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