《MUMEI》
スタンド・バイ・ミー
「夜中にチャイム鳴らすバカがどこにいんの!?
あ!いたわ、ここに」

「だから、悪かったって〜!!」


メールとか電話とかすればいいものを、
梶野がチャイムなんか鳴らすから、お母さんが起きてきてしまったのだ。


「でもさ、お前んちのおばさん、物わかりいいな!」

「…あれは眠かっただけだって…」


『星座を見る会です』という、
いかにも嘘っぽい梶野のひと言で、お母さんは
「ああそう。
いってらっしゃい、気ぃつけんのよー」

と言うと、すぐに寝室に戻ってしまった。


―娘が心配じゃないのか!!?


まあ、いっか。
2人っきりってゆっても
相手は梶野だし。



2人乗りした自転車。


あたしは


自転車をこぐ梶野のシャツを掴みながら


梶野のへたくそな鼻歌を聴いていた。


「…それ、なんて曲??」


あたしが聞くと、


「あ!?スタンド・バイ・ミー…って、
お前まさか、知らねーの!?」


との答えが返ってきた。

―いや、知ってるけどさ!!
(ベン・E・キングの…)


梶野…音程ひどすぎるよ…

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