《MUMEI》
「父さん、裕斗と二人で食事がしたいって言ってるんだけど…どうする?」
―――父さん…か。
「うん…、わかった、いいよ…」
▽
階段を上がり、玄関の扉を開ける。
「ただいまー!」
俺はシューズを脱ぎながら、奥に居るであろう真菜に向かって言う。
するとバタバタと激しい音と共に真菜が現れた。
「何してんのよ!
全然連絡つかなくて馬鹿!!
直哉さんが…、直哉さんが!!」
真菜はがくっと床に崩れ、黙ってしまった。
「な、直哉が…
え?」
ただならぬ雰囲気に緊張が走る。
俺もしゃがみ込み、真菜の肩を掴んだ。
「危篤…だって…
危篤だって!!
死んじゃいそうなの!馬鹿!早く病院行って!!」
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