《MUMEI》 電話家に帰り着いてからも、 東郷君の笑顔と、 “よかった” の言葉が、頭から離れない。 ―あれって、どういう意味!? …まさか、まさか!! 〜♪♪♪♪♪♪♪〜 …電話?? ―ピッ 「…もしもし??」 『あ、もしも〜し! 元気だった??』 電話は、マキからだった。 「うん。いきなりどしたの??」 『いや、ちょっと心配でさあ』 「…なにが?」 『幸、今日あの東郷君とデートしてたって!ホントなの!?』 ―げ!! なんで知ってんの!? 「う…うん」 『マジ!?ダメだよ!!』 ―マキも、梶野とおんなじこと… 「えーと…なんで??」 『幸、知らないの!? 東郷君って、一定の彼女作らないでしょ? あんなにもてるのに』 「…うん」 『あれね、本命がいるからなんだって!! しかも、それがなんか叶わない恋らしいよ? …詳しくは知らないけど… だから、遊びで付き合うこと多いみたい!!』 「そ、そうなの…??」 『そう。 だから、騙されないよーに気を付けんのよ??』 「…はい」 『あ!あと…幸がさ、 梶野と付き合ってんじゃないかって、 ちょっと噂になってるよ??』 「…はあ!? ―無い無い!! それは断じて無い!」 『…そう?? あたしは東郷君より梶野の方が 幸に合ってると思うんだけどなあ♪』 「も〜…!やめてよ!!」 『ごめんごめん! じゃあ、ちゃんと気ー付けんのよ?? …ばいばーい☆』 「うん、ありがと。 ばいばい!」 ―パタン… ケータイを閉じて、 小さくため息をついた。 …そんな噂あったんだ… あたしは あんまり周りのこと見える方じゃないから、 全然知らなかった。 だから、東郷君、 あんなこと聞いたんだ。 だから、東郷君は 『誰か』に恋する瞳をしてたんだ―… なんだか力が抜けてしまって、 ベッドに倒れこむと、 あたしはそのまま眠ってしまった。 前へ |次へ |
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