《MUMEI》

「  ふ、 ウ!」


    ぴしゃっ

振動と一緒に両手が濡れた。互いに肩を揺らして息をする。



「「はぁ、はぁ、は……」」

俺の肩に顎を乗せてきた。
「……手、洗ってくる。」

両手がキラキラしてて綺麗なものでも拾ったみたいだ。






部屋に帰って布団に寝そべる。目の前に両手を広げて口にあてた。
さっきはすっかり学校だったこと忘れてた。あのあと、七生と何話したっけ?

話してないかも。無言で、横顔を見ていた。

おやすみって言ったら口パクで愛してるって言っていた。(気がする)

あれで、七生と気持ちが通じたかは解らないけれど。

愛してる。
その一言が出てこない。
言ってしまうとその分だけこの気持ちが安っぽく思えるから。



違うな、理由付けたかっただけか。
恥ずかしいんだ。
扱くのは出来るのに……。

飾らない言葉ほど心が剥き出しになる。
七生はカッコつけないでぶつかってくるからカッコイイ。七生がいつか俺を暴いてくれるのを待っている。

寝る前に七生の家を見た。窓から光が漏れている。
体育座りで膝を抱えた。

きっとまた夢に七生が出て来るだろう。


俺達は不安定なバランスで保ってて、それはやっぱり互いに惚れてるからなんだ。恋仲って難しい。七生はそういうの経験豊富で俺へ無償の愛情を注いでくれている。それは怖いくらい純粋な、魂を揺さ振る衝動。そんなに直球に俺は戸惑ってしまう。

七生は何しているかな。離れていても七生は俺を想ってくれるかな。

学校でキス、明日は体育なのに首に唇の痕……。

モラルって、なんだろう。

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