《MUMEI》

「じゃー、もっかい話してみるわ!やっぱ好きだし、善は急げだし?」

「がんばって。フラれた暁には、また慰めてあげるから」

「不吉なこと言うなや!」

笑いながらももう頭の中は彼女のことを考えているんだろう。ホントわかりやすいわね。

「ありがと、先生」

私はひらひら手を振って、保健室のドアを開ける背中を見送った。






多分気づいてないんでしょう。
あなたはすごい魅力を持っているということを。
私があなたを好きだということを。

もし私の気持ちを知ったら何て言うのだろう。
その人懐っこい顔で笑うかしら?それとも嗤うかしら?
どちらにせよもうここにはこなくなるだろう。

もしフラれたら私はどうするんだろう?
もう一度アタックする勇気なんて、きっと、ない。

だから私たちはずっと、教師と生徒という現代の枠組みだけでいられるのだろう。空虚で絶対的なつながり。彼がここを卒業するまで、それは断たれない。
明確な線は私たちの間に常に横たわっているけれど、常に私たちをつないでもいる。

私は酷くそのことに安堵して、再びコーヒーのカップに口づけた。

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