《MUMEI》

「で、それをあたしに言ってどうしたいわけ」

「や、どうしたいってワケじゃないけどさー」

もう陽もすっかり暮れたpm6:23の職員室。数学の赤点補習で居残りさせられていた俺は、課題を提出するべく担当の内田のところへ来ていた。
眠気覚ましのコーヒーと、テストを印刷するインクの匂い。教師たちの間の遠慮がちな喧騒。
もっさりしたスーツ姿の公務員の多い中で、内田はポロシャツにジャージとさながら体育教師のような格好をしていた。
乱雑に参考書や教科書が並んだディスクには、本人の性格同様可愛らしさのカケラもない。

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