《MUMEI》
ぽつんと一人
七生とは以前より距離を置いている。自重することも大事だ。

学校祭のステージ音響担当になった。

七生は地区大会を優勝して、全国へ、安西と神戸も、全国こそ行かなかったけど上位入賞出来た。

そして俺達のドキュメント映像も全国へ行ける。

最高だ。



今日は完全下校で部活がないから、七生と帰ろうかとも考えたけど止めておく。互いに別々に帰ることも増えた。

コンビニ寄ってから帰ろう。

「先輩!」

店内の雑誌をめくったところで安西に会った。

「安西だ、今帰り?おにぎり買い過ぎだな。一人で食べるの?」

籠に10個くらいおにぎりが入ってた。

「まさか、ウチ離婚して片親なんでたまにご飯面倒なときとかコンビニで済ますんです。」

離婚してたのか。知らなかった。

「そっか、アイス食べる?奢るよー。この間のコンクール頑張ったで賞に。」

棒アイスをくわえながら二人で自転車を押しつつ道なりに歩く。

安西が早くに食べ終える。俺は溶ける速度に追いつけず下から吸いながらのみっともない食べ方になった。

口も手もベタベタで、笑っている安西に自転車を歩道に停めて貰う。

「有志!久しぶり」

あの濃い紺の制服は名門高校のものだ。こっちにやって来た。

「ああ……、本当に。」

安西の知り合いみたいだ。

「友達?」

俺のことか?

「……うん。」

ん?友達なのか?

「サッカー続けてるんだろ?クラブの奴ら会いたがってるぞ。早く勘取り戻せよ。」

サッカー……、やってたんだ。

「あー、そうだな。」

「にしても、この制服何処だっけ。」

「すぐ近くのとこだよ」

「マジで!なんで安西がそんなとこに?
あ、いや、フーン。そうだな近いし。」

なんだその品定めするような目つきは。不愉快だ。
しかも安西、辛そう。

「……今の住所は?近所なんだろ?」

コイツ友達なのか?目が笑ってない。

「…………えー 」

硬直したみたいになっている。

「有志!早くしないと時間間に合わない!」

アイスがベタ付いた手で安西を引っ張る。

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