《MUMEI》
「達也さんは…
直哉の事…、好きですか?」
お互いに泣く事も落ちつき、静かな空間の中、俺は正面を見据えながら口を開いた。
「俺にとってたった一人の…
大切な弟だ…
好きとか嫌いとかじゃない…、
いなけりゃ…、いてくれなきゃ…、
直哉…………」
俺の重い胸の中が…少しだけ軽くなった。
直哉は…一人で生きてきた訳じゃないのが分かって…嬉しくてまた折角落ち着いた涙がまた溢れてきた。
少しの沈黙の後、今度は達也さんが口を開く。
「裕斗君は…、直哉の事…」
「…俺……
俺は……、」
俺は…瞼を閉じた。
…秀幸…
大好き…
どうしようもなく…
愛してるよ。
キスが切なくて…
抱かれて
…本当に嬉しかった。
愛してる
…愛してる…
でも…
サヨナラ……
「俺は直哉が…好きです…
大切な…、大切な人です…、
いてくれないと…
ずっと一緒にいたいです……」
――そして時間は過ぎ、朝になった。
医師に状況説明の為、2時間事に呼ばれ、また居なくなっていた達也さんが戻ってきた。
そして椅子に座る事も無く、うつ向く俺に、ペットボトルを俺に差し出してきた。
「血圧が安定してきたって…、だから今直ぐどうにかなる事はなくなったって…」
「…本当…ですか…」
俺は達也さんを見上げた。
少しだけ笑いながら…泣いている。
「重篤なのは変わんないけどな、望みは出てきたよ…、俺、家に電話してくるから…、」
――俺は……
力が抜けて、長椅子に横たわった。
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