《MUMEI》
記憶2
 私には解らなかった。

 一樹がなぜ、黙って出て行ってしまったのか。

私のどこが悪かったのか解らない。

 朝食は、いつもちゃんと三品必ず作っていたし、洗濯も掃除もちゃんとしたし、我が儘も贅沢もしたつもりがない。
 
 なのにどうして失ってしまったのだろう。


 私には、今でも解らない。

 こんな天国から地獄に突き落とされるような残酷な報いを受けるくらいなら、一樹とは、出会わなければ良かった。

 自分が好きになれないまま、世界は闇のまま生涯を終えた方が気が楽だった。出口があるかも知れないという希望を私は、持ってしまった。

 だけど、奇跡だと感じてたのは、私だけの思いで、一樹にとっては、平凡な恋愛が始まって、やがて倦怠期を迎えて、心が離れていった。それだけの事だったのかも知れない。

 薔薇色に見えていたのは、私のフィルターを通してだけで、救われてと感じていたのは、私の方だけだったのかもしれない。

 私が悪いんだ。私が悪いんだ。全部私のせいなんだ。

 私の努力が足りなかったんだ。一生懸命に家事をこなしているのが恩着せがまあしくてうざかったんだ。

 どこかで、『私こんなにいい奥さんなの。だからもっと愛して』オーラ全開で、彼の首を少しずつ真綿で締めて窒息させていたのだ。


 
 あぁ。神様。

ただ、愛しただけなんです。好きで好きで仕方なかったんです。

勝手に好きで、勝手に愛したんです。

それじゃ、いけませんか?

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