《MUMEI》 「せんぱーい……」 安西が全力で走る俺を抜かす。 「ありがとうございます!」 「いーよ、俺達友達だろー?」 「すいません!」 あたふたと謝る姿は笑いを誘う。 ブレーキをかけて二人で停まる。 「俺あっちの入り組んでる道だから、じゃあな。」 「あ、あの……」 背中のシャツを掴まれた。ふらついて足をつく。 「危ないな。」 最近自転車事故になりけることが増えた。 「送らせて下さい……俺の話聞いて貰えませんか?」 「いつ話すなって命令した?意思を持って話すのは自由なんだよ。」 安西って入院している頃の昔の七生に似てる。 「……俺、私立中学通ってたり、クラブチームのサッカー通ってたりしてたんです。 両親の離婚で母方についてからは私立高校の進学から外れて周りは受験でピリピリするし、運悪くストレス解消のはけ口にされて、サッカーにしても友人関係にしてもどこか本気になれなくて……今まで中学校話さなかったおーちゃんと高校でクラス一緒になって何かが変わる気がしたんです。 今日……中学の奴と再会して自分が何も変わらなかったって思い知らされた、変われるはずなかった。」 泣くか思っていたけど違った。失望しているんだ、自分に。 「安西って昔の七生に似ていると思っていたけど、俺に似てる……かも。 そうやって卑屈にならなくてもさ、そういう自分でも受け入れてもらえるようになればいいよね。」 互いに苦労してたんだな。若者だもん悩みも沢山ある。 前へ |次へ |
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