《MUMEI》
声の主
よく見ると、その背中を向けた警備隊たちのさらに向こうから銃弾がとんできている。
 ユウゴは走りながら、その銃弾の撃ち主が見える位置まで移動する。
どうやら、この屋上への出入口である穴から何者かが攻撃をしてきているようだ。
 さらに場所を移動しようとしたその時、突然の爆発が警備隊たちを吹き飛ばした。

 ユウゴはほとんど転倒しながらも、俯せになってその爆発を乗り切る。

遠くでユキナの悲鳴が聞こえてきたが、彼女がどうなっているのか確かめることはできない。

目を閉じて、ひたすら爆発がおさまるのを待つ。
たった数秒間が何分にも感じられた。

 ようやく顔を上げると、目の前にはユウゴと同じように俯せて爆発を乗り切った警備隊が数人、起き上がろうとしているところだった。
まだ、こちらには気付いていない。

「伏せて!!」

その何者かの声に瞬時に反応してユウゴは再び地面に突っ伏す。
同時に数発の銃声が響き渡った。
ゆっくり顔を上げると、今、起き上がろうとしていた警備隊たちは、ゆっくり膝から崩れ落ちていった。

 ユウゴは恐る恐る立ち上がり、声の主を探す。

まず視界に入ってきたのは、驚きに目を見開いているユキナの姿だ。
彼女は、茫然とある一点を見つめている。
声の主がユキナではないことは明らかだ。

 ユウゴはユキナが見つめている方向へ視線を移した。
屋上への出入口となっている四角い穴。
そこから肩から上だけをひょっこり覗かせている人物が、こちらを見ていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫