《MUMEI》 質問2家までの道。 ふと気になったことを、 梶野に質問してみることにした。 「…あのさ、 東郷君って、好きな人いるのかな?? ―梶野、知ってる?」 「……それ、うわさ?」 「うん、まあ… なんか、『叶わない恋』、って聞いたから…」 梶野が、自転車を止める。 あたしも、自転車にブレ−キをかけた。 「―…だから、ゆっただろ? “止めたほうがいい”って」 「だって、 理由もわからずに、 諦められないじゃん」 あたしが反論すると、 梶野は小さくため息をついて話し出した。 「…わかった。 ―司には、 ずっと前から好きな人がいる。 誰なのかは、俺も知らないけど… “相原には、たぶん絶対勝てないヤツ” ―ってことだけは、確かだな」 「なにそれ!? …どういうこと??」 「―悪い。それ以上は言えない。 …でも司はさ、それで苦しい思いしてきてんだ。 『女殺し』なんて言い方しちゃったけど、 自分の気持ち抑えようって、必死になってんだと思う。 …やりかたは良くないっておれも思うよ。」 俯いたままそう言うと、 梶野は、急に真剣な目つきになって、 あたしを見つめた。 ―今までに無いくらい、真剣な瞳。 「…だけど、そのことで司を責めないでやって。 お前のアドレスあいつに教えたのも、 “相原ならなんとかできんじゃねーか” って思ったからなんだ。 ―勝手に、ごめん」 こんな真剣な梶野を見るのは初めてで、 あたしは その瞳から、 目を逸らすことができなかった。 事情は詳しくはわからなかったけど… 真剣な梶野の瞳には 「うん」 と答えることしか できなかった。 前へ |次へ |
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